インプラントというのはこれまで申し上げたとおり、骨(歯槽骨)に埋め込みます。ということは、インプラントがきちんと埋まるだけの骨の高さと厚みがなければインプラントが飛び出てしまい、インプラントをすることはできないのです。
そして、歯が抜けてしまった場所は患者様の年齢が高くなるほど、骨(歯槽骨)の高さが低くなり、厚みもなくなっていることが多いのです。ですから、インプラントをすることが年齢を重ねるに連れて難しくなるのは年齢的な問題というよりは実はこの骨(歯槽骨)の高さと厚みがなくなってしまいインプラントを埋めることが出来ないという問題なのです。
「えぇっ、そうしたら私はインプラントができないの?」
「私は歯周病で歯が無くなってしまったからインプラントできないんじゃないか?」
「その骨(歯槽骨)がない人はインプラントできないの?」
「骨(歯槽骨)がない人でも、何とかインプラントをやる方法はないの?」
そう思われると思います。
特に日本人の場合は、欧米人と比べて骨が細いので、このような問題が発生しやすくなります。やはり、このような問題・悩みを抱えている方が多く、その問題を解決するための方法がいくつも開発されました。
その方法を今から、ご紹介いたします。
原理は簡単です。
無くなってしまった骨(歯槽骨)をインプラントを埋めることができるだけ再生し、そこにインプラントを埋め込むということです。原理は簡単なのですが、それを実行するのはなかなか難しいのです。
歯が抜けてしまうと、それまで歯を支えていた骨(歯槽骨)は急速に吸収されていってしまいます。骨(歯槽骨)には高さと厚みが重要です。高さが低くなってしまう場合と厚みが足りなくなってしまう場合の大きく分けて2種類があります。
GBR法はこのどちらにも対応できます。
GBR法であれば、ある程度までの骨吸収に対応することができます。
しかし、上顎の奥歯の場合にはGBR法では対応できず、ソケットリフトやサイナスリフトでなければ対応できない場合もあります。
しかし、増やす骨の量が多い場合には、インプラントの手術を行う前にGBRを行って骨を増やしてからインプラントの手術を行います。
増やす骨の量が多くない場合にはインプラントを埋め込むと同時にGBRを行います。
先ず、高さが不足している部分に通常通りにインプラントを埋め込みます。このまま、手術を終わらせてしまうと骨(歯槽骨)の高さが足りずに、インプラントが骨としっかりと結合することができません。
骨の高さを増やすために、自家骨もしくは骨補填材をインプラントの周囲に覆うように置きます。
これによって、インプラントが安定するために十分な骨の高さを得ることが可能になります。
チタンフレームの入った非吸収性のメンブレンをチタンピンで固定し、歯肉弁を戻して縫合します。
このようにしないと、歯ぐきが入り込んできてしまって骨(歯槽骨)を再生させることができません。
2〜10ヵ月間、待つと骨が再生されるので、その後、メンブレンを外して、かぶせ物を作る治療に入っていきます。
骨の厚みが足りない場合には3〜6ヶ月でしたが、インプラントを埋めるのに必要な骨の高さまで骨を再生させるのは時間がかかってしまいます。
GBRを行ったことで無事に、歯を入れることができました。
GBRを行うことによって審美的に美しい歯を作ることができます。
GBRを行ってからインプラントの手術を行う場合には、手術の期間が長くなってしまいますが、インプラントを長持ちさせるために必要な時間だとお考え下さい。
上顎の上には上顎洞という空洞があり、その空洞と歯を支えている骨(歯槽骨)の距離はとても短いのです。
そして、上顎の奥歯が抜けると、それまで歯と結合することによって高さを保っていた骨(歯槽骨)が吸収されていってしまうことによって、上顎洞までの骨の高さが不足して、インプラントを埋め込むことができなくなってしまいます。
ここまで、骨が不足するとGBR法では対応できず、入れ歯にならざるを得ませんでした。
しかし、インプラントを入れたい場所から、上顎洞に向け、人工の骨を入れることで上顎洞までの骨の高さを増やし、そこにインプラントを埋入する方法が開発されたのです。
このソケットリフト法は上顎洞までの距離が5mm.以上あれば適応できます。しかし、5mm.未満の場合にはサイナスリフト法によるインプラント治療が適応されることになります。
ソケットリフトは局所麻酔(通常の麻酔)で行われるので、痛みはほとんどありません。注意点として、手術後1週間は、手術を行った側の鼻を強くかまないで下さい。この理由は上顎洞にはシュナイダー膜という膜があります。卵の殻の内側についている膜と同じ様にとても薄いので、強く鼻をかむと膜が切れる可能性があるためです。
ソケットリフトはサイナス・リフトに比べると、患者様、歯科医師の立場からも、時間的、肉体的、精神的に簡便な治療法ですし、手術後もより安定を期待できるため、比較的多く行われる方法です。
通常、上の奥歯を抜いてしまうと、上顎洞が下側に拡大して同時に、失った歯の周囲の本来歯を支える役目だった歯槽骨の厚みが加速的に減少していきます。
歯を支える顎の骨(歯槽骨)の高さが2ミリ未満の場合、インプラントを埋め込んでも、インプラントが上顎洞に飛び出してしまい固定できません。
したがって、サイナスリフトという治療手法を選択する必要があります。上顎洞は、上顎にインプラントを埋め込むときの解剖学的な制約事項となっており、かつては上顎の奥歯はインプラント治療ができない場合が多くありました。
しかし、このサイナスリフトが確立され、上顎奥歯にもインプラント治療ができるようになりました。但し、治療期間が3ヶ月〜9ヶ月と長めであるという難点はあります。
また、歯槽骨が2ミリ未満の場合は仮に「入れ歯」を入れても土台が柔らかく固定されない為、安定性も非常に悪くインプラントのほうが効果的です。
歯がなくなると、歯槽骨の吸収が進行します。上顎の場合は、左図のように上顎洞の拡大も進行する可能性もあり、歯槽骨はさらに薄くなります。
歯槽骨の骨の高さが低くなると、図のように必要なインプラントが埋入できなくなリます。
したがって、骨(歯槽骨)の高さを確保する必要があります。サイナスリフトの場合、この骨(歯槽骨)の高さが2mm.未満の場合に適応します。
歯槽骨の薄い部分の上顎洞底部に移植骨や骨補填材を填入します。このとき、インプラントを同時に埋入する場合と、インプラントは骨の造成が完了してから行う場合とがあります。骨があまリにも薄い場含は、インプラントの固定ができないので、後者の方法を選択します。
サイナスリフトとは、Maxillary Sinus Augmentation と言い、上顎洞粘膜(シュナイダー膜)を上顎洞の底部から剥がして持ち上げ、シュナイダー膜を持ち上げたことによってできた隙間に自家骨や骨補填剤を移植することにより上顎洞の底部の位置を上げ、インプラントを埋入できるだけの骨の厚みを確保します。
インプラントが骨(歯槽骨)と結合したら、かぶせ物をを製作し装着します。
骨(歯槽骨)の厚みがある程度、ある場合はサイナスリフトとインプラントの手術を同時に行いますが、著しく骨(歯槽骨)が吸収されているケースではサイナスリフトを行い、骨が安定するまで4〜6ヶ月ほど期間を置いてからインプラントを埋め込みます。
サイナスリフトは確かに、ソケットリフトよりも大掛かりな手術ではあります。しかし、考え方によってはとても確実性の高い手術なのです。
なぜなら、ソケットリフトの場合は時間的、精神的、肉体的にも負担は少ないですが、実際にはシュナイダー膜を目で見ずに感覚で手術を行わなければいけません。
それに対して、サイナスリフトはしっかりと肉眼でシュナイダー膜を確認しながら手術を行うことができるので、確実性が高い方法と考えることもできるのです。また、ソケットリフトでは高さを確保できるのが3mm.程度とも言われており、サイナスリフトのほうが高さを確保できるという点も優れている点です。
サイナスリフトの欠点としては治療期間が2ヶ月から9ヶ月と長期間、かかってしまうことと、手術が大掛かりということです。
吸収された歯槽骨の高さを揃えるために開発されたのがディストラクションインプラントです。これは骨の高さを垂直に動かすことができ、歯槽骨内に挿入した後、徐々に骨の全長を延ばし、望まれる高さまで歯槽骨を移動させることができます。
歯が抜けた後、歯槽骨が吸収されてしまい、インプラントを埋め込むための骨の高さが不十分な状態です。
ディストラクションを行う部位の粘膜を切開剥離します。
ディストラクターを取り付ける位置を決め、ドリルや骨ノミを使って骨片を作製します。ディストラクターを取り付けます。手術1週間後からディストラクターを少しずつ(1mm/day)広げ始め、骨を作りたい位置まで骨片を牽引します。
歯槽骨が再生し、インプラント埋入するための準備ができました。
骨移植とは、インプラントを埋め込むときに骨が薄いことによりインプラントが露出してしまうケースや、手術前に骨が薄い(高さがない)ケースにその骨の量を増大させる方法です。
歯が残っているときの状態です。
歯を失うことで、歯槽骨の吸収がおこります。
移植骨や骨補填材などを用いて、歯槽骨の足りない部分を補います。
3〜8ヶ月経過後、インプラントを埋入します。吸収された歯槽骨が再生され、良い状態になっています。
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